11:うつや不安と慢性頭痛の関係とは?

 頭痛のみならず慢性の痛みにはうつや不安が付きまといます。
 どちらが原因でどちらが結果かということは難しいですが、慢性頭痛患者さんの3割以上に不安やうつが合併すると言われており、特に慢性緊張型頭痛には8割以上にうつ状態が合併するとされています。
 
 精神科的にはうつや不安は多くのタイプに分類されており、世界水準の診断基準(世界保健機構の基準ICDや米国精神医学会基準DSMなど)に則って診断されます。
 しかし一般的に頭痛などの身体の病気に関係するのは、反応性、つまりストレスによる反応として不安やうつが強くなり、同時に痛みを感じやすくなるという場合が多いようです。
 
 このことは脳の中で起こっている神経伝達物質というものの増減との関係で見ていくと分かりやすいようです。
  一般的に不安は対象のない恐怖とされ、漠然としていますが、予期不安といって、何か悪いことが起きるのではないか、という嫌な感じも伴います。 
 不安に関係する脳内物質は大雑把に言ってセロトニンとノルアドレナリンです。
 セロトニンは片頭痛の原因としても解説しましたが、不安緊張を和らげる働きがあります。
 これが不足すると気分が落ち込んでやる気が出なくなります。
 また、もう一つの脳内物質であるノルアドレナリンとの相互作用で、急に動悸がしたり、息苦しくなったりする不安発作を起こします。
 
 セロトニンやノルアドレナリンは脳幹に多く含まれ睡眠との関係が強い物質です。
 睡眠が障害されるとセロトニンが減少しノルアドレナリンは増加してきて、うつや日中の強い不安感や恐怖感を起こしやすくなります。
 
 片頭痛の慢性化には睡眠障害が関係すると言いましたが、片頭痛のみならず緊張型頭痛も睡眠障害で慢性化します。
 その背景には、セロトニンが不足し痛みを強く感じるようになることと、ノルアドレナリンが増加し不安感が強まる、という脳内物質の変化も関係しています。
 更にドパミンという脳内物質も悪夢の発生に関与しているようです。
 筆者は不安が悪夢などの原因となり、睡眠の質を悪化させて頭痛の慢性化を来し、結果的にうつ状態になるのではないかと考えています。
 
 ストレスに対して過敏に反応している状態が不安であり、頭痛やめまい、動悸などの身体症状を出しますが、そのうちセロトニンなどの脳内物質が減少してきてうつ状態になり、やる気が出なくなります。
 従ってこのような状況に落ち込んだ患者さんには、いくら頭痛薬を出しても効かず、心理療法と、セロトニンなどの脳内物質を回復させる薬が痛みを抑えるのに役立ちます。
 
 薬に頼りたくない方は、まず次項で説明するような睡眠の質を改善する方法に取り組んで下さい。
 夜中の2時前後に深い睡眠に入っていると、マスターホルモンである成長ホルモンの分泌が盛んになり、傷んだ組織の修復が進むと同時に、セロトニンなど他のホルモン産生が促され、片頭痛の慢性化や、うつ、不安症状を防ぐことに繋がります。

 
 
 
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