5:たまに起こる緊張型頭痛とは?

 反復性緊張型頭痛の原因は、首の筋肉や後頭神経(第1~3頚神経)の刺激であり、後頚部に急に強い痛みを感じることもあります。
 このような場合、たいていは首の筋肉や筋膜の炎症により、筋肉の間を走行する後頭神経も過敏になっており、炎症が強い場合はいわゆる後頭神経痛を起こしてきます。
 
 よくあるのが寝違えです。
 これは無理な姿勢で寝たため、首の筋肉に血が通わなくなって硬くなり、炎症と痛みを起こす物質が蓄積して、腫れた筋肉の間を通る神経が過敏になって朝起きの頭痛を来すものです。
 通常は炎症止めの作用を持つ消炎鎮痛薬を飲んで安静にしていると1週間程度で良くなりますが、睡眠不足や痛みをこらえて無理して運動などしていると慢性化することもあります。
 
 また咽頭の裏側の粘膜に慢性炎症が起きて、頚部の筋肉に炎症を起こしてくることも良くあります。
 通常は扁桃炎など咽頭周囲の組織の急性炎症がきっかけで起こってくるものですが、中には筋肉の腱に石灰沈着が起き、石灰分が吸収される時に炎症を来し、後頚部痛や咽頭痛と共に頭痛を来してくる場合もあります。
 石灰沈着を伴わない場合は、大体数ヶ月〜年に1回程度起きて1週間程度で治るので、これが反復性緊張型頭痛の典型と思われます。
 
 首のけがでむち打ち損傷と言われているものでは、頚椎骨や脊髄神経に異常をきたすこともありますが、通常はレントゲン写真やMRI検査などでは異常が出ません。
 外傷直後は筋肉が腫れて熱を持ちますが、2週間位して腫れが取れると筋肉は硬くなって動作で痛みを出しやすくなります。
 また硬くなった筋肉で首の神経が圧迫されて後頭部痛を出すこともあり、これらがむち打ち損傷後の頭痛の原因の大半を占めています。
 
 このタイプの痛みを、筋肉と筋膜から来る痛み、すなわち「筋筋膜痛」と言います(痛みの総合研究参照)。
 初期の段階で筋肉の炎症を抑えるような適切な処置(1〜2週間の安静と消炎鎮痛剤)がとられれば、筋筋膜痛タイプの緊張型頭痛になっていくことが防げます。
 
 更に外傷や加齢などで首の関節が少しゆるんだために、関節を包む膜が刺激され痛みを出す頚原性頭痛というものもあります。
 首の骨の変形や椎間板からの刺激も原因となり、頭の片側だけの反復性緊張型頭痛を起こすようになります。
 これら頚筋炎・筋筋膜痛タイプや頚原性頭痛タイプの緊張型頭痛は後頭神経が刺激されて起きているわけですが、痛みはむしろ眼の奥や前額部に感じられます。
 これは関連痛といい、後頭神経と顔面の感覚神経である三叉神経が脳幹を通じて神経線維がつながっているために起こります。
 首に痛みの原因があるにもかかわらず、前額部や目の奥の痛みの方が強く感じられます。
 
 これらは頭痛が起き出した時期に、きちんと炎症止めの消炎鎮痛薬を飲んで冷やして安静にすれば慢性化しないで済みますが、ある程度無理したり、不安から睡眠が浅くなり食い縛りや首の筋緊張が持続したりすると慢性化します。
 また直後からマッサージや運動などを行うと炎症の治りが悪く却って悪化します。
 
 原因が首にありますから、診断には念入りな頚部の診察が欠かせません。
 しかし通常緊張型頭痛で病院にかかると、頭痛なので頭部の検査を受け異常なしとされます。
 慢性化した時点では残念ながら痛み止めだけでは良くならないので、原因が分からず頭痛薬が効かないといって頭痛外来に来院される方が多いのです。
 
 どちらのタイプかにより治療法は異なりますが、慢性化した場合は同時に睡眠障害を起こしていることが多いので、睡眠の質の改善とともに刺激を受けている神経や関節に炎症止めや局所麻酔薬を注射する「神経ブロック」を用いて治療することになります。
 軽い場合には内服薬や坐薬、外用薬で良くなる場合もあります。

 
 
 
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