3:なぜ片頭痛が止まらなくなるのでしょう?
通常、片頭痛は気候の変化、女性ホルモンの変化、睡眠不足や寝起きの時間の変化、精神的ストレスなどで起きます。
人それぞれに程度や頻度が違い、目の前がキラキラしてものが見えなくなるような、閃輝暗点という前兆を伴う方も2割程います。
数ヶ月に1回から月2回程度と頻度の少ない方もあれば、Aさんのようにほぼ毎日片頭痛がおこる方もいます。
持続時間は、診断基準では4時間から72時間と言われていますが、生理前後に4〜5日続く方もあれば、小児では1〜2時間で治まってしまう子もいます。
セロトニンは神経伝達物質という、体調の調整に使われる物質で、必須アミノ酸のトリプトファンから作られ常に供給されています。
女性ホルモンが低下する生理前、あるいは排卵時、また温度や気圧変化、睡眠時間の変化などで、体調を整えるのにセロトニンが一時的に総動員されます。
また不安緊張を和らげるためにもセロトニンが使われます。
セロトニンが急に増えると誰でも少し動脈が収縮しますが、片頭痛体質をお持ちの方はこの反応が強く、この時に急に肩や首が凝ってきたり、眠気がさして生あくびが出たり、光って見えなくなる閃輝暗点という前兆が出たりします。
しかしセロトニンは代謝が早く、すぐ減少してしまいますので、血管平滑筋により血管が収縮していられなくなり、反動でばねのように強く脈打つように拡張して血管壁の神経(三叉神経)を刺激し、拍動性の痛みが出ます。
これが片頭痛発作です。
この状態が4時間から長いと3日間も続き、血管周囲の三叉神経が刺激を受け続けますので、つらさは並大抵ではありません。
三叉神経の痛みは歯の治療の時に経験した方も多いと思いますが、非常につらいものです。
また神経の刺激が持続すると吐き気の中枢も刺激され、気持ち悪くなって吐いて動けなくなります。
光や音・匂いにも敏感になります。
そのため、また同じような片頭痛が起こったらどうしようという強い不安感を持ちやすくなります。
これが睡眠の質を悪化させ、市販薬を多く飲んでしまうという行動につながります。
睡眠が不十分だとセロトニンの回復が遅れ、さらに片頭痛が起きやすくなるという悪循環が起こって、片頭痛の回数がどんどん多くなります。
市販薬の飲みすぎによっても血管周囲の神経が過敏になり、市販薬にカフェインが含まれていると睡眠障害の原因にもなります。
このような事情でAさんの頭痛は慢性化していたのです。
もう一つ、セロトニンが減少してくると気持ちが落ち込んできます。
不安感を和らげられなくなるからです。
片頭痛をつらく感じるのはこのことも関係しています。
ですから慢性化した片頭痛の方には、まず市販薬をやめていただき、睡眠を改善させるための睡眠衛生指導を行います。
またどうしても薬に対する依存ができていることが多く、これを抑えるために予防薬を飲んでいただきます。
世界的には片頭痛の予防効果が認められている薬は多数あり、日本でも次第に片頭痛に保険適用が認められる薬剤が増えています。
Aさんのような原因で増えている片頭痛の回数を減らすために、適当な薬剤を選んで使えば回数は確実に減ってきます。
Aさんも、睡眠衛生指導と適切な予防薬、それと片頭痛発作をすぐ止めることのできる特効薬トリプタン系薬剤を使うことにより、徐々に頭痛の回数が減り、また職場の上司にも適切な情報を伝えることにより、次第に安心して仕事ができるようになってきました。
片頭痛は30代の女性が一番多く、生理と関係することが多いため、この時期になると不安感や睡眠不足から片頭痛が長く続くこともあります。
生理のときに片頭痛が起きる人は多いのですが、たいていは生理痛の一種と思っているようです。
しかし実際には片頭痛であることがほとんどで、この場合も片頭痛の治療をすると生理前後を楽に過ごせるようになります。
一番よい治療法は、患者さん自身が片頭痛の起こる原因を理解し、自分にあった対処法を身につけることです。
片頭痛を起こさなくすることは残念ながら今の医療ではできませんが、起きづらくすることはできます。
また片頭痛は年齢とともに頻度が減少し、閉経後には6割以上の方が起きなくなるか軽くなることも分かっています。
一回の片頭痛発作を、なるべく早く軽くやり過ごすようにすることが最良の治療であり、一人一人にあった対処法を一緒に考えていくのが頭痛外来なのです。
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