2:片頭痛は立派な病気です

 片頭痛が続いて日常生活に支障を来すようになったAさんは、インターネットで筆者のクリニックを探して受診されました。
 
 筆者はまず頭痛の性質について詳しく問診しました。
 時間をかけて問診することで、片頭痛か違う頭痛かが9割以上推測できます。
 裏を返せば、詳しい問診なしには片頭痛の診断はつかないということです。
 
 Aさんの頭痛は中学校くらいからあったようです。
 ただ最初は月1回位で、薬を飲まなくても少し寝ていれば治っていました。
 それが社会人になり、仕事を始めるようになってから、次第に頻度が増え、会社を休んでいられないので市販薬を飲んで抑えるようになりました。
 それでも初めのうちは薬を飲むと2時間くらいで頭痛が治まっていました。
 
 しかし2年ほど前から次第に薬が効かなくなり、飲んでもまたしばらくすると痛くなり、吐き気も強くなって仕事が続けられず、早退させてもらうことも多くなりました。
 上司は「また風邪かい?」などと皮肉な言葉をかけます。
 なかなか会社も休めず、次第に頭痛の回数や持続が長くなり、今ではほとんど毎朝起きると頭が痛い状態です。
 薬を飲んで会社に行きますが、またすぐ頭が痛くなり、薬を飲むことを繰り返して、60錠入りの市販薬が1ヶ月も持たずなくなる状態だそうです。
 話しながらAさんは次第につらそうな表情になり、涙ぐむようになりました。
 
 片頭痛は胸痛、腹痛などと同じ一つの症状と思っている医師が少なくありません。 
 ですから一般の方はなおさら病気とは考えられないでしょう。
 
 しかし片頭痛はりっぱな病気です。
  
 頭が痛いという訴えは症状ですが、同時に吐き気、まぶしさ、めまいなどの自律神経症状を伴いますし、原因として血管壁がセロトニンという体内物質に反応しやすいという遺伝的体質をもつことも分かっています。
 すなわちウィルスが風邪を引き起こすように、生理や気候の変化、寝不足などが片頭痛という病気を引き起こすのです。
 風邪で休むのはしょうがないが、頭痛くらいでやすむのはたるんでいる、と考える人が多いのは、片頭痛がまだ体質からくる病気と捉えられていない証拠です。
 
 片頭痛はそれ以外に、痛みの質としても非常に強いため、頭痛に対する不安感をかき立てやすいということも分かっています。
 また頭痛が起きて動けなくなったらどうしようと思っている片頭痛患者さんはけっこう多いものです。
 
 市販薬は適量であればよいのですが、有効成分の消炎鎮痛剤はどうしても早く切れやすく、また一緒に含まれるカフェインや眠気を起こす成分などでくせになりやすいので、次第に量が増えて行きがちです。
 月に10日(1回2錠の服用であれば20錠)以上、市販薬を飲むようになったら飲み過ぎと考えて、頭痛外来にかかることをお勧めします。
 
 次回はAさんの片頭痛が慢性化した原因と、治療内容について説明します。
 
 
 
 
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