Lesson2 頭痛治療と自分でできる対処法


頭が痛い、とりあえず病院へ・・・という前に、
ここであなた自身の頭痛を自分で診断してみましょう。


一般的な症状
 
診断結果
  • 眼のまわりやこめかみ、額のあたりが痛い
  • ずきずき、ずきんずきん、ガンガン、ドキンドキンなどと血管の拍動する感じで痛い
  • お風呂に入ったりお酒を飲んだりして血の巡りが良くなると悪化
  • 吐気や嘔吐がある
  • 光や音が頭に響く
  • 頭痛の前にきらきらと光が見えて物が見えずらくなる
  • 空腹のときに頭が痛くなりやすい
片頭痛
  • 片目の奥がえぐられるようなひどい痛み
  • お風呂に入ったりお酒を飲んだりして血の巡りが良くなると悪化
  • 吐気はない
  • 季節の変わり目に痛くなりやすい
  • 鼻水や充血、流涙などがある
群発頭痛
  • 頭の後ろからてっぺんあたりが痛い
  • 毎日頭痛がする
  • 後ろ頭や頭全体をぎゅーっと締め付けられるような感じ
  • 頭がバンバンに張ったような感じがする
  • 重苦しく、ふぁーっとメマイを伴う
  • お風呂に入ったりお酒を飲んだりして血の巡りが良くなると軽くなる
緊張型
  • 頭や首を動かすとビリッと鋭い痛みが後頭部から側頭部に走る
  • ズキンと痛んで首を動かせない
後頭神経痛
  • 毎日朝起きると頭が痛いので薬を飲む。でも痛みが治まらない。
慢性連日性

 

 さて皆さん、どうでしたか? ご自分の頭痛がどの種類なのか予測がつきましたか?

 お断りしておきますが、この自己診断はあくまで慢性頭痛に限ってのものです。ずっと頭が痛いから慢性頭痛だろうと思っているあなた。病院へ行くのは何だか厄介だし、どこへ行けばよいか分からないし・・・と悩んでいるあなた。もし一度も頭の検査を受けたことがないのなら、ぜひ最寄の頭痛に理解のある病院(脳神経外科、神経内科、ペインクリニック科など)へいき、検査を受けて下さい。その上で安心して慢性頭痛をうまく治す工夫をしましょう。

 もし病院へ行くのでしたら、現在では日本頭痛学会が認定した頭痛専門医が全国にいますので是非お掛かり下さい。近くに専門医がいない場合には、最近では慢性頭痛のオンライン診療を行なっている施設もありますので調べてみて下さい(Lesson3 頭痛の最新医療情報へ)。病院にかかるときに自分の症状をまとめていくことは、診察時間の短縮にもなり、頭痛の専門家には喜ばれます。

 

もうちょっと詳しく知りたい方に
 ●著者が使用している慢性頭痛の問診票

  ※ご注意:アンケートや自己診断表ではありません。

 

 慢性頭痛の治療はどうするのでしょうか?

以下に著者が行っている治療を中心にお話しします。
 
片頭痛の場合
 予防的服薬と発作頓座療法の二種類に分かれます。片頭痛の頻度は人それぞれですが、大体は週1回~月1回程度が多いようです。片頭痛は頭痛発作のない時には、まったく何でもなく日常生活を送れるわけですから、どれくらい日常生活に支障をきたしているかによって、予防的服用が必要かどうか決まります。

消炎鎮痛剤やトリプタンをのむ、こめかみを冷やす、安静にする
薬を内服する、規則正しく生活する、日常生活の注意点を守る

 

治療の詳細 片頭痛

月平均して日常動作が半分以上できなくなっていると感じる場合
 予防のために薬を内服したほうが良いでしょう。

 現在では塩酸ロメリジン(ミグシス)が第1選択になります。エルゴタミン製剤であるジヒデルゴットも以前は予防に使われましたが,吐気がでることもあり、今では予防には役立たないということが分かってきました。その他抗けいれん剤、βブロッカー、抗うつ剤などが使われますが、最近特に選択的にセロトニンの血中濃度を上げる作用をもつSSRIが注目されています。これはもともとうつの治療薬として開発されたものですが、セロトニンを増やす作用があり片頭痛の予防薬としても用いられます。

 予防薬をいつまで続けるかは、特にきまりはありませんが、大体2~3ヵ月を目安として終了することが多いようです。

痛くなった時の治療
 軽い頭痛のときには普通の痛み止め(消炎鎮痛剤)が効果があるようです。しかしガンガンし出すと、普通の痛み止めでは効かず、特別な薬にたよることになります。以前から用いられてきた片頭痛止めとしては、エルゴタミンとカフェインの合剤(クリアミンなど)がありますが、これも吐気の副作用が強く、また痛みの初期でないと効果がないことが多く、使いづらいものでした。

 幸い2000年より日本でもやっとトリプタン製剤という特効薬が使用できるようになり、注射と点鼻ではスマトリプタン、飲み薬ではスマトリプタンとゾルミトリプタン、エレトリプタン、リザトリプタン、ナラトリプタンという5種類が使用でき、片頭痛の7割程度に効果的です。

 ちなみに各製剤は作用が若干異なり、イミグランの注射や点鼻の方が速効性という結果が出ています。またエルゴタミン製剤とは同時に内服しないように注意が必要です。

片頭痛を起さないための予防
 規則正しい生活(夜更かし、寝不足も寝すぎも良くありません)、朝食をきちんととること、人ごみの中はなるべく避ける、お酒や長風呂を控える、コンピューター端末などを見すぎて目が疲れた場合は目の周りを冷やして休む、冷房などで頭を冷やしすぎない(暑い屋外にでるとてきめんに反跳性血管拡張が起こります)などの日常生活の注意点を守ると良いでしょう。また生理などに関係して起こる場合は、その数日前から予防薬を内服するのも効果的です。


 

群発頭痛の場合

 全ての慢性頭痛の約1%と頻度的には非常に少ないのですが、そのあまりにも特徴的な臨床症状のために、一度群発頭痛の発作をおこしている人を見たら二度と忘れられないようなインパクトがあります。眼を押え頭を抱え込むようにしてウーッとうなっている様子は、まさに地獄の苦しみに耐えているという言葉そのものです。

 通常は放置しておいても3時間程で治まりますが、その間が拷問のようだといいます。片頭痛で夜間救急外来にくる人はそれほど多くありませんが、群発頭痛の方は、やはりじっとしていられないためか、救急外来によく来られます。季節の変わり目に多いので、春と秋に患者さんがかたまる傾向にあります。


純酸素吸入、注射薬(スマトリプタン)、各種神経ブロック
漢方薬(呉茱萸湯)、塩酸ロメリジン(ミグシス)やSSRIがやや有効

 

治療の詳細 群発頭痛

治療法
 血管収縮作用をもつ純酸素が有効なことが多いようです。しかしスポーツ用の酸素は圧力も低く量も少ないため、実際にはあまり効きません。医療用の酸素を自分でガス会社と契約して購入している方もいるようです。大体目安は5~7Lを15~30分吸入する必要があります。また、注射薬でスマトリプタン(イミグラン)は非常に効果があります。

 逆にスマトリプタンが効かないのは群発頭痛ではない可能性があり、注意が必要です。イミグランの点鼻薬も効果はあります。また内服薬のトリプタンは4剤とも群発頭痛には保険適用が通っていませんので注意が必要です

予防薬について
 片頭痛と異なりあまりよい予防薬はありません。循環器の薬である塩酸ベラパミル(ワソラン)を1日6錠内服すると、かなり効果的との報告があります。漢方薬(呉茱萸湯)、塩酸ロメリジン(ミグシス)やSSRIがやや有効な場合がありますが、通常はあまり効果は期待できません。ステロイド療法が有効なことが多いのですが、副作用が強く、始めから使うわけにはいきません。

発作期に
 星状神経節ブロックが有効なことがあります。原理的には逆に発作を誘発しそうですが、有効な人もいます。また発作を止めるのに眼の裏側の神経にブロック(翼口蓋神経節ブロック、耳介側頭ブロックなど)をすると有効です。

慢性群発頭痛の治療
 毎日群発頭痛が起こるようになった場合の治療には、リチウム療法、高気圧酸素療法、高周波熱凝固療法、ガンマナイフ治療、手術療法などの特殊な治療が必要になります。

 

緊張型頭痛の場合
 最も数が多い疾患です。多くの方が頭痛で受診されますが、その8割が緊張型頭痛です。緊張型頭痛は大きく分けて、精神的ストレスによる場合、筋肉や筋膜が硬くなって痛みを生じやすい場合、首の骨が弱って関節が緩みそこから痛みが生じている場合があります。従って治療もそれぞれの病状に応じたものとなります。

筋肉をほぐす、リラックスできる方法を実践、安定剤・鎮痛剤の服用、後頭部や目を温める
体操や気分転換などを心がける 
ストレッチはこちらを参考に

 

治療の詳細 緊張型頭痛

基本的な治療法
 肩、頚部の筋肉が凝って硬くなっているわけですから、それをもみほぐす、つまり温めて血の巡りを良くし、ストレッチ体操やマッサージなどで硬くなった筋肉をほぐしてやることが第一です。

 次に精神的ストレスの原因を取り除くことは通常難しいので(例えば仕事が忙しくて休めない、というビジネスマンに、それがストレスですからなるべく休む時間を取りなさい、といっても何の解決にもなりません)できる範囲でリラックスできる方法を覚えてもらいます。簡単なのはオフィスで座りながら出来る肩・首の体操です(体操)。またほんの数分でも眼を冷やして伸びた姿勢で静かにしているとリフレッシュできるものです。気持ちの切り替えも必要でしょう。

 自分が肩こりと自覚できない人は、しばらく投薬で楽になった状態を体験してもらうのも良いと思います。筋弛緩作用の強い軽い安定剤と、胃に負担の少ない鎮痛剤が有効です。ただし薬で良くなったあとは、だらだら薬を続けるのはよくありません。自覚が出たら、また肩こりにならないよう、体操や気分転換などを心がけるよう指導します。

筋肉・筋膜が硬い硬結となり痛みを生ずる場合(筋筋膜痛)
 主にケガやスポーツ後の肉離れが高じて起きやすいのですが、自分で気がつかないうちに軽い肉離れを起している場合もあります。寝違えなどもこれです。この場合は硬くなった筋肉を温めるのは同じですが、ケガの直後だったりまだ筋肉が熱をもって腫れている時期は冷やした方が良いのです

 通常ケガをしてから1週間程度で腫れがひき硬くなってきます。その後は温めてマッサージは同じです。ただし飛び上がるほど痛い場合は痛み止めの注射(トリガーポイントブロック)によりとても楽に治療できるようになります。薬も必要なことが多いのですが、温めたあとマッサージも兼ねて痛み止めの軟膏を塗りこむのが効果があります。

 後頭部にズキンと響いて頭を動かせない場合は、後頭神経ブロックの適応になります。注射なので嫌でしょうが、通常1~2回で良くなります。また肩の関節が硬くなり肩甲骨周囲が張ってくると、頚部から頭まで響く筋肉の硬い筋が出来やすくなり、腕にも痛みやしびれが出てきます。肩の周囲に使い捨てカイロやアイスノンを温めたものを当てておくと、かなり楽になります。


特殊な頭痛の場合
良性労作時頭痛

 スポーツに伴っておこる突発性・拍動性の頭痛。水泳中などに多いようです。緊張型と血管性の混合型であることが多いようです。ウォーミングアップを十分行うことで防げます。

 

後頭神経痛

 緊張型頭痛と区別が難しいのですが、片方あるいは両方の後頭部から耳にかけて、頭を動かすとズキンと鋭い短時間の痛みが走ります。頑固な後頭神経痛の場合は、後頭神経ブロックや高周波熱凝固法で治療します。手術が必要な場合もあります。

 

薬物乱用頭痛慢性連日性

 片頭痛薬のカフェルゴットやクリアミンなど、あるいはカフェインを含む市販の鎮痛薬などを毎日多量に内服することで、かえって頭痛が起こってしまうものをいいます。薬剤誘発性頭痛は慢性連日性頭痛となり、一度この悪循環がおこればなかなか治療も難しくなります。そうならないためには頭痛薬は1ヶ月に10回程度を限度にするのがよいと言われています。

 

気分の落ち込みに伴う頭痛

 抑うつ状態の1つの身体症状と考えられます。悲嘆感や憂うつ気分などより身体の症状を訴える場合を仮面うつ病といいますが、そこまでいかなくても、気分がふさぐと何となく頭が重いものですよね。こんな時は前屈みで猫背の姿勢になっており、十分深呼吸が出来ないために、ため息も多くなります。

 軽い抗うつ剤であるSSRIなどやスルピリドなどの薬と、眠れないことが多いので、入眠導入剤などを処方することが多い病気です。完全主義で生真面目な人に多いので、ゆっくり休める環境作りが大事になります。

 

小児の頭痛

 学校がいやでずる休みの口実、と考えられやすいのですが、最近小児にも慢性頭痛が多くなっています。やはりストレスや身長がのびて筋肉が弱いため、首が凝りやすい、あるいはTVゲームに夢中になり、肩こりが慢性化する、運動不足で疲れやすい、など以前は考えられなかった環境の変化が原因のようです。

また片頭痛も小児には多く、大人と違う点はまだ脳が未発達のため、脳波に異常をしめす片頭痛の子が多いという点です。従ってある種のけいれん止めが小児の頭痛にはファーストチョイスになります。


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