Lesson1 頭痛をよく知る
頭痛で苦しんでいる人は大勢います。一番心配なのが、頭の中に何か悪いことが起こっているのではないかということでしょう。大抵の場合は心配入りません。反対に、CTやMRIで何も悪いところがないと分かると、一般のお医者さんは治療意欲をなくして痛み止めを出して帰してしまうことになります。多くの慢性頭痛の人たちが病院へ行こうとしないのは、こうしたやり方しかなかった医者の側にも責任があります。
慢性頭痛は日本人のおおよそ4割の人たちがかかっている病気です。日本の社会ではまだ、頭痛が病気という認識は少なく、ひどい片頭痛で会社を休んでも「たかが頭痛くらいで」と怒られた経験をお持ちの方が少なくありません。
でも皆さん、知っていますか?1年間に頭痛にかかる医療費は何と約3000億円です。日本の国民総医療費は約30兆円ですから、少ないと感じられるでしょうが、欧米では頭痛の医療経済に及ぼす統計が整備されており相当な損失が報告されています。これを見るとやはり頭痛は立派な病気と見なすべきでしょう。 |
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頭の近辺で痛みを感じる部分は決まっています。
代表的な原因個所は、以下の三点です。

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神経が刺激されて起こる、いわゆる神経痛があります。
顔が痛くなる三叉神経痛、後頭部にズキーンと響く後頭神経痛などが主な頭痛と関連する神経痛です。
三叉神経痛の主な原因は、神経のそばの動脈が神経に当たり(多くは動脈硬化などで血管が蛇行するようになるため)動脈の拍動が神経に伝わり、刺すような痛みが何回も起こります。後頭神経は第2第3頚椎の間から出ており、その部分の骨や靱帯が変形、肥厚することで神経を締め付けるようになると、後頭神経痛が起こります。これは首を動かすと後頭部や耳介部にびりっと刺すような痛みが起こるものです。
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主に頭皮の動脈ですが、血管の壁には痛みを感じる神経が豊富に存在します。これが度を越して拡張すると、ずきんずきんという、血管性頭痛に特有の拍動性の痛みになります。体内のセロトニンという神経伝達物質(ホルモンの一種)が血管の収縮・拡張の主役です。
このセロトニンは脳内や血小板、腸壁などに多く含まれ、普段はそれほど多く血液内に存在しませんが、何かの刺激で血小板などから急激に多量に放出されることがあります。これは強力な血管収縮作用をもつので、脳の血管は一時縮んで脳の血の巡りが悪くなります。この時にきらきらと光が見えたりする、前兆とよばれる現象がおこります。
しかしセロトニンはすぐ分解され尿に出てしまいますので、今度はセロトニンが少ない状態となります。すると今まで収縮していた血管は反動で急激に拡張し、拍動が血管壁から痛みの神経を介して頭痛として伝わるとされています。
したがってセロトニンを適度に増やせば、片頭痛は抑えられる訳です。
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運動時には活発に収縮弛緩を繰り返し、筋肉内の血管をもむ感じで血の巡りを良くしています。ところがじっと同じ姿勢で筋肉をこわばらせておくと、血の巡りが悪くなり筋肉が酸素不足となって痛みを起す乳酸その他がたまってきます。また硬くなった筋肉をむりに動かすと筋線維に裂け目が生じ、そこが硬くなって痛みの原因となります。これを筋硬結といいます。
この部分は非常に敏感で、少し押しただけで飛び上がるほど痛いこともあります。そのような場所を圧痛点(トリガーポイント)といいます。またこの筋硬結部に出来た圧痛点を押すと、離れたところが痛くなります。これを関連痛といいます。
このように圧痛点と関連痛を伴う場合、筋筋膜痛症候群といい、筋肉由来の慢性の痛みで体のどこにでもおこります。
頭痛の場合は頚部にある筋肉が筋筋膜痛を起すため、関連痛として頭が痛くなるのです。
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原因を純粋に神経・筋肉・血管と区別できないことも少なくはなく、これら全てが関係して慢性頭痛を起している場合もよくみられます。
一次性頭痛 |
CTなどの検査ではっきりとした異常が認められない頭痛。ほとんどの慢性頭痛はこのタイプ。
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二次性頭痛 |
原因がはっきりしている頭痛。脳腫瘍とかクモ膜下出血あるいは慢性硬膜下血腫という、放置しておいたら命にかかわる頭痛は、全体の1%弱。
●血管性頭痛~頭皮の血管(動脈)の拡張が原因 |
片頭痛
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1~数ヶ月に1~2回、周期的にこめかみや眼を中心におこる拍動性(ずきんずきん、ガンガン)の強い頭痛が特徴。30才前後の女性が最も多く、慢性頭痛全体の約4分の1を占める。もっと頻度の多い人もいて、多くは吐気を伴い吐いてしまう。
一旦頭痛が始まると、光や音がものすごくわずらわしく、頭を動かすたびにガンガン響いて、静かなところでじっと寝ているしかない状態になる。大体は一晩寝ると楽になるが、中には2~3日具合の悪さが続く人もいる。また2割程度の人は前兆といって、頭痛がおこる20分程前から、目の前に光るぎざぎざが現れだんだんと広がったり、人物が異常に大きく見えたりゆがんだり、風景が流れたりする見え方の異常を感じる場合もある。
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群発頭痛
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30才前後の男性によく見られる。慢性頭痛の1%程度。季節の変わり目に年1~2回、1~2ヶ月の間毎日、きまって片方の眼の奥がえぐられるような、絞り切られるような、と表現される激痛が数時間起こる。アルコール摂取や激しい運動、熱い風呂などで誘発される。
大体は寝入って1~2時間してひどい痛みで眼がさめるという状態で、片頭痛とは違いじっとしていられず、頭を壁にガンガン打ち付ける人もいるくらい。頭痛と同時に眼が充血し涙が出たり、鼻がつまって鼻水がでたりという症状もある。
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●非血管性頭痛~血管拡張とは関係がない |
緊張型頭痛
(肩こり頭痛)
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痛みの程度はそれ程ひどくないが、何となく重苦しいという状態から後頭部にびりっと痛みが走る状態まで様々な程度がある。多くは肩こりが見られ、苦しいので何となく後ろ頭に手が行ってしまうのがこのタイプ。最近ではコンピューターを長時間扱う人が多くなり、肩こりの原因となることが多い。肩こりは精神的ストレスの現われとも考えられ、頻度的には最も多く、慢性頭痛の6~7割を占める。
年令も10才代から90才代まで幅広く、若いうちは何とかスポーツやパーッと騒いでストレス発散が出来ていたのが、段々年とともに無理が利かなくなるとメマイやすっきりしない感じがとれなくなり、次第に気持ちも落ち込んで軽いうつ状態になったりもする。特に何でも完全を望む人が肩の違和感を気にして落ち込むことが多い。またものすごい肩こりにもかかわらず、肩こりを自覚できない人もいる。
肩こりは筋肉の血の巡りが悪くなり、乳酸などの疲労物質がたまって痛みを引き起こすので、温めて動かすのが治療の基本。
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Lesson2 頭痛治療と自分でできる対処法