学会イベント 第4回北海道頭痛勉強会後記 更新 : 2003年5月25日
第4回北海道頭痛勉強会後記

去る5月21日(水)午後6:00より札幌パークホテルにて第4回北海道頭痛勉強会が開催されました。300人収容の会場がほぼ満席となる盛況ぶりでした。
まず会に先立ち,共催メーカーであるグラクソスミスクライン株式会社より,6月9日に発売となるイミグラン点鼻スプレーの製品説明があり,イミグラン注とイミグラン錠のほぼ中間の立ち上がりで速効性が期待できること,錠剤より作用時間が長いことなどの特徴が挙げられていました。やはり重症で早く直したい片頭痛の患者さんにはこの上なく強い味方になることでしょう。
午後6:20頃より,札幌医科大学神経内科の松本博之教授の座長のもと,一般演題3題が発表されました。第一席目は北見が「イミグラン錠・注射の日本における臨床経験」と題して,2000年4月のイミグラン注の発売以来,市販後調査を重ねたGSKの成績の一端を発表いたしました。結論として臨床的有効率は従来7割程度とされているのをはるかに上回り,錠剤で87.4%,注射で94.1%の有効率が確認されました。またイミグラン注の群発頭痛への有効率も91.4%と高率でした。副作用も市販前調査よりかなり低く,錠剤で12%(治験時31.6%),注射で6.5%(治験時14.9%)でした。多くは一過性の軽いものでしたが,アナフィラキシーなど重篤な副作用は約2000例中4例にみられました。しかしそれらも全例回復しており,イミグランの安全性が示されたといえます。
第二席目は中村記念病院神経内科の溝渕雅広先生が「低頭蓋内圧症候群の症例」ということで,今話題の低髄液圧症候群について発表されました。多くは腰椎穿刺後だったり外傷後,手術後におこりますが,少ないながら原因不明のものも見られ,起立時の嘔気を伴う拍動性頭痛が特徴で,横になると楽になることが多いそうです。またMRIや造影CTなどで髄液漏れが確認出来,腰椎穿刺で髄液圧が陰圧になることもあります。頭部造影MRIで肥厚性硬膜炎という特徴的な硬膜の増強効果が見られる場合もあります。これは疑わなければ診断できない病気ですが,はっきりとした診断基準が示されていないことも事実ということでした。
第三席目は札幌医科大学綜合臨床科の木村眞司先生が「難治性の混合型頭痛の症例」をご発表になりました。木村先生は今回より江別市立病院神経内科の柳原哲郎先生とともに頭痛勉強会の幹事として参加されており,会の趣旨を鮮明に打ち出していただいてcontroversialな症例をご発表になりました。形としては典型的な片頭痛発作で発症した若い男性が,次第に慢性化するとともに,職場,親子,夫婦関係がかなり入り組んで背景を構成していることが浮き彫りになり,頭痛治療には内科的治療や心身医学的な側面のみならず,社会環境面も充分考慮しなければ解決できない症例があることを我々に教えてくれました。今後このような症例に各方面から議論を加えていく時間も必要と思われます。
午後7:10頃より札幌医科大学麻酔科教授である並木昭義先生の座長のもと,本日の特別講演である「目からウロコの頭痛学―頭痛を識る・看る・治す」が間中信也先生により発表されました。間中先生は言わずと知れた日本の頭痛の第一人者で,神奈川県小田原市にある温知会間中病院院長をされています。忙しい日常診療の合間に,本勉強会のお誘いに応じて札幌に来て下さいました。参加者の殆どが間中先生の講演を楽しみにして来られたといっても過言ではないでしょう。講演は先生お得意のPCプレゼンテーションで,動画や音楽をふんだんに貼り付け,眼と耳で実感できる片頭痛の話をなさいました。昨年横浜で間中会長のもと行われた日本頭痛学会の懇親会で演奏された「片頭痛交響曲」も再び聞かせていただき,感激いたしました。前兆「aura」の言われや歴史上一番インパクトのあった片頭痛など,先生がこれまで蓄積されてきた頭痛学の博識の一端を効果的に示され,あっという間の1時間が終わりました。途中「プレデターの呪い」でPCがフリーズするハプニングはありましたが,片頭痛の前兆に関しては実に多くの形があったり,発症メカニズムが詳しく研究されているということが改めて認識でき,とても印象的な講演でした。
午後8:20頃,本勉強会の顧問である北海道大学名誉教授の田代邦雄先生より会のまとめがあり,閉会となりました。この会がますます発展していくだろうという感想を述べられ,われわれ幹事一同これから更によりよい会にしていくよう努力することを誓い合って第4回北海道頭痛勉強会を終了いたしました。次回は今年秋頃にアストラゼネカ株式会社の共催で予定いたします。
文責 北見公一 
プログラム
第4回北海道頭痛勉強会
日時:平成15年5月21日(水)18:00より
場所:札幌パークホテル パークホールBC
(札幌市中央区南10条西3丁目 TEL011-511-3131)
製品紹介「イミグラン点鼻液20」グラクソスミスクライン(株)北海道支店学術研修部
演題
座長 札幌医科大学医学部 神経内科教授 松本博之先生
「イミグラン錠・注射の日本における臨床経験(使用成績調査の中間報告)」
北見クリニック院長 北見公一先生
「低頭蓋内圧症候群の症例」
中村記念病院神経内科 主任医長 溝渕雅広先生
「難治性の混合型頭痛の症例」
札幌医科大学医学部地域医療総合医学講座 木村眞司先生
特別講演
座長 札幌医科大学医学部麻酔学講座教授 並木昭義先生
「目からウロコの頭痛学~頭痛を識る・看る・治す~」
間中病院院長 間中信也先生
閉会の挨拶 北海道大学名誉教授 田代邦雄先生

共催:北海道頭痛勉強会
グラクソ・スミスクライン(株)
後援:北海道医師会
札幌市医師会
 
 
 
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