学会イベント 第3回北海道頭痛勉強会後記 更新 : 平成14年10月14日
平成14年10月2日,札幌パークホテルにて第3回北海道頭痛勉強会が開かれました。前日はあいにくの台風21号の直撃を受け東日本は大荒れの天気で,翌日にかなりの支障が予測されましたが,幸い当日札幌は風が強かったものの,雨も降らず出席者の出足も順調でした。205名の皆様にご参集いただき,18:00を5分ほど遅れてまず今回の協賛メーカーであるファイザー製薬から,7月に発売された新しい片頭痛治療薬「レルパックス」について20分ほど学術の方の説明がありました。
18:20頃,会の顧問をお願いしている北海道大学神経内科教授の田代邦雄先生より開会のご挨拶があり,勉強会が開始されました。
まず症例報告として2演題が登録されており,座長は幹事持ち回りで,今回は北見が勤めました。いずれも症例報告というより,それぞれの分野での頭痛の総論のような発表で,聞かれた皆様はそのまま次の日の診療に役立つような知識を得られたのではないかと思いました。
1題目は「副鼻腔炎に伴う頭痛」という題名で,中村記念病院神経内科の佐光一也先生がご発表されました。各々の症例の治療前治療後のMRIを提示され,きれいに治癒しているのを見ますと,やはり頭痛治療においては副鼻腔炎を正しく診断し,早期治療しさえすれば患者さんを煩わしい頭痛から開放できるという実感が湧いてきました。
2題目は「精神科領域の片頭痛の検討」という題名で,三浦メンタルクリニックの三浦 彌先生にご発表いただきました。片頭痛で精神症状を呈し,片頭痛の治療を行ったら精神症状が取れたケース,あるいはその逆に精神病の改善とともに頭痛の訴えがなくなったケースなど,非常に示唆に富む症例報告がなされました。またそれぞれのケースでレルパックスを初めとするトリプタン製剤の診断的使用の意義などにも触れられていました。今後の片頭痛治療のひとつのトピックスになりそうな領域と思われました。
座長不手際で10分ほど遅れて,本日のメインエベントが始まりました。台風による飛行機の遅れで1時間ほどご到着が遅くなられましたが,東京から日本の頭痛研究の権威でいらっしゃる北里大学内科学神経内科教授 坂井文彦先生にお越しいただき,「片頭痛の診断と治療」という題でご講演いただきました。座長は当勉強会顧問でいらっしゃる,札幌医科大学麻酔科教授の並木昭義先生にお願いしました。初め15分ほどプロジェクターがうまくつながらず,幹事一同ハラハラして見守っていましたが,さすがに場馴れされている坂井先生は微塵も動ずるようすもなく,スライドなしで話を続けられました。スライドが出てからは,持ち前の話のうまさで聴衆をぐいぐいと頭痛研究の世界に引き込み,あっというまに1時間がすぎてしまいました。内容は頭痛医療のEBMについて,札幌には4万人も片頭痛患者がいるはずなのに2.7%程度しか病院を受診していない。逆に姉妹都市であるポートランド市では80万人の人口のうち36%もの片頭痛患者が病院を受診するから,人口は札幌の1/3なのに片頭痛患者は3倍いる。また最近ではWHOの調査で,世界中の人が患っている病気のうち女性の12位,男性の17位に片頭痛がランクされており,WHOも頭痛研究に力を入れてきている。片頭痛の取り上げ方もdisabilityとして,人生の中でどれだけ片頭痛によって生活が障害されるかという見方をしてきている。その中で2005年にはアジアで初めて日本が国際頭痛学会の開催国に選ばれ,坂井教授が会長をするので応援して欲しいという話もされました。また来年改訂される国際頭痛学会の診断基準の話もされ,特に小児の片頭痛と慢性連日性頭痛の位置付けについて現在との違いを詳しく述べられていました。片頭痛研究については,前兆に影響するのはセロトニンだけでなく,ノルアドやドパミンもそれなりの影響を及ぼす可能性について話されました。
講演後質問がフロアから2つでて,坂井先生が丁寧に答えられていました。
予定の終了時間である20時を30分近く超過し,会の終了のご挨拶を当勉強会の顧問をして頂いている札幌医科大学神経内科教授の松本博之先生よりいただき,無事会を終了いたしました。今回は進行の不手際や,参加された皆様のご質問の時間を充分に取れなかったなど反省すべき点も多く,今後改善していきたいと思います。また来年3月に第4回目を予定していますが,今回ご参加いただけた皆様に,次回もまたご参加いただけるような魅力ある勉強会を作っていきたいと幹事一同考えております。最後に恒例のアンケート集計結果を公表し,勉強会後記と致します。(北海道頭痛勉強会幹事;北見公一,田中千春,藤木直人)
頭痛勉強会アンケート集計結果
アンケート回答者136名(医師34名,看護師30名,薬剤師27名,その他2名,不明43名)
1.この会を何処で知りましたか?
ダイレクトメール12名(看護師3,薬剤師7,不明2)
ファイザー製薬MR83名(医師30,看護師9,薬剤師18,不明26)
医学雑誌1名(不明1)
その他(医局・道医報)40名(医師4,看護師17,薬剤師3,その他2,不明14)
2.内容はいかがでしたか?
つまらなかった6名(医師2,看護師1,不明3)
まあまあ38名(医師7,看護師7,薬剤師12,不明12)
やや満足39名(医師11,看護師9,薬剤師9,その他1,不明9)
とても良かった43名(医師12,看護師10,薬剤師5,その他1,不明15)
※未回答10名
3.今後もこの頭痛勉強会に参加したいと思われますか?
それほど参加したいと思わない4名(医師1,看護師2,不明1)
都合がつけば参加したい113名(医師28,看護師26,薬剤師23,その他1,不明35)
ぜひ参加したいので連絡がほしい15名(医師4,看護師2,薬剤師4,その他1,不明8)
※未回答4名
4.一般演題はいかがでしたか?
よく分からない8名(医師1,看護師2,薬剤師2,不明3)
良かった94名(医師21,看護師25,薬剤師17,その他2,不明29)
自分で発表する気はない6名(医師3,不明3)
要請があれば発表してみたい1名(医師1)
その他13名(医師5,看護師1,薬剤師3,不明4)
※未回答14名
5.トリプタン製剤をご処方(服用)されたことは?
処方(服用)したことはない59名(医師10,看護師20,薬剤師11,その他2,不明16)
たまに処方(服用)する42名(医師12,看護師3,薬剤師12,不明15)
良く処方(服用)する11名(医師6,薬剤師1,不明4)
片頭痛には必ず処方(服用)する10名(医師4,薬剤師1,不明5)
※未回答14名
6.前問で処方(服用)したことがない方の理由は?
片頭痛という診断なし16名(医師5,看護師2,薬剤師4,その他1,不明4)
従来薬で十分3名(医師1,看護師2)
トリプタン製剤を十分認識していない21名(医師7,看護師5,薬剤師1,不明8)
その他13名(看護師5,薬剤師4,その他1,不明3)
7.レルパックスをご処方(服用)されたことは?
処方(服用)したことはない95名(医師22,看護師23,薬剤師20,その他2,不明28)
たまに処方(服用)する18名(医師6,薬剤師2,不明10)
良く処方(服用)する7名(医師4,薬剤師3)
片頭痛には必ず処方(服用)する1名(医師1)
※未回答15名
なお,各々の質問以外に,会に対する意見が数多く寄せられましたが,ここでは割愛させていただきます。ご協力いただいた皆様方,誠にありがとうございました。この結果は次回の勉強会に反映させていただきます。
 
 
 
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