学会イベント 第1回北海道頭痛勉強会 開催後記 更新 : 2002.2.25(日)
 去る平成13年9月10日午後6:00より札幌グランドホテルにおいて第1回の北海道頭痛勉強会が開催された。折りしも外は台風15号と秋雨前線による大雨であったが,それにもかかわらず参加人数は231名を数え,頭痛に対する医療者の関心の高さを改めて感じさせた。参加者の職種は医師,薬剤師,看護婦,製薬メーカーなどであった。勉強会に先立ち,今回の協賛メーカーである,グラクソ・スミスクラインから新製品「イミグラン50錠」の製品説明があった。学術担当の女性の歯切れの良い説明があり,参加者の間でもとても分かりやすかったと好評であった。

6:20より頭痛勉強会が開始された。まず北見がこの勉強会を立ち上げた経緯を説明。昨年までの頭痛研究会は,かなり某メーカーに依存するところが多く,内容も学会風で一般医療者には閉ざされた研究会だった。たまたまメーカーの都合で昨年で頭痛研究会が閉会となったこと,昨年からイミグラン注の発売により日本にもやっと片頭痛をきちんと診断治療しようという運気が高まった今こそ,頭痛治療の情報を交換する自由な場が必要と感じたことなどから,「頭痛好き」3人(北見,北大神経内科の藤木先生,中村記念病院神経内科の田中先生)が集まって自由に頭痛治療の情報を交換する会としてこの頭痛勉強会を準備した。勉強会という名称は,形式張らずにみんなで普段着の意見を出し合って勉強していこうという意味を込めてつけた。会の学問的顧問を北大神経内科の田代教授,札医大麻酔科の並木教授,札医大神経内科の松本教授にご依頼申し上げ,ご快諾いただいた。第2回からは検討症例や質疑応答などを募る予定である。という内容で話した。

6:30頃より一般演題を開始した。座長は顧問の一人である並木教授にお願いした。

1.緊張型頭痛の1症例 北海道脳神経外科記念病院 北見公一

65才男性。急に頭が締め付けられ眩暈がするという主訴にて来院。血圧は176-96。神経学的陽性所見は四肢腱反射軽度亢進のみ。病的反射なし。理学的に後頚部の筋緊張が著明で圧痛はあるが,関連痛はない。CTでクモ膜下出血なし。心理検査ではCMIⅡ領域,SDS48点,TEGはN型FC低位タイプであった。先月会社を定年退職したばかりで,新しい仕事を懸命に探している最中であった。本人は肩こりに対する自覚はない。緊張型頭痛の診断にはなるが,この場合はepisodicでもchronicでもないため,IHS診断基準では2.3その他の緊張型頭痛と診断される。抗不安薬,筋弛緩剤,肩こり体操の指導,リラクセーション法の導入で改善。家族から少しのんびりして欲しいといわれたのが,却って罪悪感を引き起こし無理をしたのが直接のきっかけだったようだ。この場合の緊張型頭痛は心身症型である。他に緊張型頭痛には筋筋膜痛型と頚性頭痛型がある。

2.片頭痛:症例からの検討 中村記念病院 神経内科 田中千春

片頭痛の前兆である鮮輝暗点にはSDが関与している。前兆のみの場合,ほんとうの前兆,てんかん発作,TIAの3つの場合がある。症例1:前兆を伴う片頭痛またはてんかん発作と区別が困難な症例。症例2:眼前に鮮輝,AVM術後。てんかんかあるいは片頭痛の前兆か?症例3:63才女性。TIA後片頭痛性脳梗塞。

3.咳嗽頭痛?の1症例 国立療養所札幌南病院 神経内科 藤木直人

58才女性。咳嗽発作に伴い頭痛がおきる。トイレで気張ると頭痛。恐ろしい夢で力むとがんがんするひどい頭痛で目がさめる。IHS分類に良性咳嗽頭痛あり。このケースは咳嗽以外でも頭痛が起こっている。この点が難しい。

次に,7:00より松本教授の座長により,田代教授の特別講演が開始された。

「頭痛の診断と治療」
北海道大学大学院医学研究科神経病態学神経内科学教授 田代邦雄

突然の激しい頭痛:くも膜下出血,脳室内出血,側頭動脈炎,ヘルペス神経炎による三叉神経(第1枝)痛・後頭神経痛。早朝につよい頭痛:脳腫瘍,慢性硬膜下血腫。頭重感,頭部圧迫痛:緊張型頭痛,眼精疲労,外傷・頚性頭痛。
髄液循環と頭痛
Ball valve action:症例 脳室内腫瘍
Saxophone headacheサキソフォン頭痛:キアリ奇形
ラケットスポーツと頭痛:特発性低髄液圧症候群。良性頭蓋内圧亢進症:北海道でのBIHの発生率など調査。以上,片頭痛治療の前に大事な頭痛について述べた。
片頭痛の患者の絵。ここから片頭痛の話。治療薬が出たということで大変よいことである。男性4%,女性13%。前兆を紙に書いてもらうとよい。前兆:身体のイメージが変化,不思議の国のアリス症候群,ルイス・キャロルも片頭痛持ち。木下杢太郎のノート。片頭痛の城壁スペクトラがきれいに書かれている。
片頭痛の病態:血管,SD,三叉神経血管説。脳血流SPECTで見た場合,神経説が有力。片頭痛の頓座療法:イミグラン,ゾーミッグ。1992年フランスのスマトリプタンシンポの会場風景。5HTのサブタイプ,トリプタンの比較,片頭痛の発生因子,予防薬,ロメリジン,バルプロ酸。群発頭痛の治療。頭痛があっても受診したことがないのが約7割。悪い頭痛を見逃さないように。

質疑応答は座長の松本先生から質問が出された。会場は230人で埋まったが,やはり気軽に質問できる雰囲気ではなかったのか,あまり活発な質疑応答はなかった。今後の課題である。
最後に協賛メーカーであるグラクソ・スミスクラインの本間支店長より閉会の挨拶があった。次回からは開会閉会の挨拶は幹事が行う予定である。

文責:北見公一
 
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